RSウイルス感染症とは?家庭内の感染と予防について、医師が解説します。

毎年冬になると感染者が増加するRSウイルス。

RSウイルスは感染するとどのような症状を引き起こしてしまうのか、また、感染対策や、感染後の治療方法があるのかなど、RS感染症について詳しく解説していきます。

RSウイルスってなに?

RSウイルスはRSウイルス感染症という呼吸器感染症を引き起こす原因のウイルスです。毎年11月頃から感染者が報告され、1月頃まで発症者のピークを迎える傾向にありましたが、2011年以降、7月頃から報告数の増加傾向がみられています。RSウイルスは世界中にウイルスがいるとされており、何度も感染し、何度も発病をするウイルスです。1歳までに半数が感染し、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染しているとされているウイルスです。

RSウイルスの感染経路は飛沫感染と接触感染で、特に家庭内での感染する確率が高い傾向にあります。乳幼児とより年長の小児のいる家族の場合には、流行期間中に家族の44%が感染したとする報告もあり、特に幼稚園から小学生くらいのお子さんがいる家庭では、子どもがウイルスを持ち込み家族内で感染を引き起こすという可能性が高いです。

RSウイルスに感染するとどのような症状が出るの?

通常RSウイルスに感染してから2~8日、典型的には4~6日間の潜伏期間を経て発症します。症状は発熱、鼻汁などといった風邪の時と同じ症状が数日続きます。多くは軽症で済み、このまま快方に向かっていきますが、症状が重くなってしまった場合には、咳がひどくなる、喘鳴が出る、呼吸困難となるなどの症状が出現します。場合によっては、細気管支炎、肺炎へと進展していくことが特徴です。

初めてRSウイルスに感染した乳幼児の約7割が、鼻汁などの上気道炎症状のみで数日のうちに軽快します。ですが、約3割では咳が悪化してしまい、喘鳴、呼吸困難症状などが出現します。特に生後数週間~数カ月間にRSウイルスに初感染した場合は、細気管支炎、肺炎といった重篤な症状を引き起こすことがあります。

実際に、乳幼児における肺炎の約5割、細気管支炎の約5割〜9割がRSウイルス感染によるものと報告されています。なお、幼児であってもこのリスクはあり、年長の子どもにおいても気管支炎の約1割〜約3割にRSウイルスが関与し ていると考えられています。

大人の場合は軽度な風邪症状で済むことがほとんどなのですが、家庭に乳幼児がいらっしゃる方や医療従事者の方は一度に多量のウイルスに暴露されるということもあり、症状が重くなってしまう方もいらっしゃいます。

RSウイルスの治療方法は?

日本ではRSウイルスに対する特効薬はありません。アメリカではリバビリンという、微小粒子の吸入薬が唯一の治療薬としてありますが、日本では使用されていません。そのため、日本では対処療法が主流となり、症状を抑えるための治療が行われます。

例えば、熱が辛ければ、熱を下げるためのお薬が処方されますし、呼吸が辛ければ気管支を拡張して呼吸をらくにするお薬を使用することもあります。

RSウイルスの予防方法は?ワクチンなどはあるの?

RSウイルスを予防するためには、手洗いが基本となります。特にRSウイルスが流行する時期にはこまめな手洗いを心がけましょう。大人であれば咳エチケットも重要です。特に0歳、1歳の子どもが家族内にいる方で咳が出るという場合には、マスクを着用し感染すると重症化しやすい乳児へ感染させないように予防をしていきましょう。

また、子ども、特に乳幼児はおもちゃを舐めたり口に入れたりするため、経口感染のリスクが高まります。小さい子どものいる家庭では、おもちゃをこまめに消毒してください。小さい子どもがいない家庭であっても感染を予防するために手すりやスイッチなど不特定多数の方が触る部分を定期的に消毒されることが必要です。

RSウイルスを予防するための消毒ですが、RSウイルス自体がほとんどの消毒剤に対して抵抗性の低いウイルスですので、消毒剤を特定しなくてもかまいません。ですが、消毒用エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨードなどが特に有効な消毒剤とされていますので、これからRSウイルス対策の消毒剤をそろえるという方はこちらの薬剤をそろえていただけるとよいでしょう。また、新型コロナウイルスと一緒に対策をしていきたいと考える方は消毒用エタノールで対策をされるとよいでしょう。

RSウイルスの感染を予防するためのワクチンは現在のところありません。ですが、RSウイルスの予防として遺伝子組換え技術を用いて作成されたモノクローナル抗体製剤であるパリビズマブという薬剤を投与することがあります。パリビズマブは感染症の重症化リスクを有する児に対して、重症化の抑制を目的として2002年から使用されています。RSウイルス感染症の流行初期に投与し始めて流行期も引き続き1か月毎に筋肉注射することにより、重篤な下気道炎症状の発症を予防することが期待できるのですが、このお薬は全ての方にできるわけではなく、以下の状況に該当する方が対象となります。

パリビズマブを投薬できるのはある一定の期間に生まれた早産の乳児や過去6カ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた24カ月齢以下の新生児、乳児及び幼児、2歳以下の血行動態に異常のある先天性心疾患、免疫不全、ダウン症候群の新生児、乳児及び幼児が対象となります。そのため、ここに該当しない方は、先ほどご紹介した手洗いや消毒などでRSウイルスの感染を予防していくことが必要です。

公開日:10月28日

監修:クリニックフォアグループ医師

参考文献

国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/317-rs-intro.html

厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/rs_qa.html

日本BD https://www.bdj.co.jp/articles/infectioncontrol/BD_05.html

健栄製薬 https://www.tepika.net/infection/rs.html公益社団法人日本小児科学会 https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20190402palivizumabGL.pdf