ノロウイルス感染症とは?症状や予防法について、医師が解説します。

冬になると猛威を振るいだすノロウイルス感染症。ノロウイルス感染症とはどんな感染症なのか、詳しくご紹介します。

ノロウイルス感染症とは?感染経路って?

ノロウイルス感染症は、ノロウイルスの感染が原因で発症する感染性胃腸炎のひとつです。秋から春にかけて流行し、冬に起こる食中毒の原因はノロウイルスによるものが多いです。

ノロウイルスは経口感染が多いとされているのですが、その感染の原因となるのが二枚貝です。ノロウイルスに汚染された海水を取り込んだ二枚貝は、ノロウイルスを体内に蓄積してしまうと考えられています。このノロウイルスを蓄積した二枚貝を加熱せずに食べてしまうと人間の体内でウイルスが増殖して症状を引き起こしてしまうのです。二枚貝の身体の中ではノロウイルスは増殖しないのですが、ヒトの体に入ると増殖してしまうことも分かっています。

これ以外の感染経路には、ノロウイルスに感染した方の下痢便や吐物の処理をした時に感染したり、家庭や共同生活施設などヒト同士の接触する機会が多いところでヒトからヒトへ飛沫感染等で感染したり、ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取したことによって感染をしてしまいます。

また、近年増加傾向であるのが、調理をされる方がノロウイルスに感染していて、その方を介してノロウイルスに汚染されているものを食べることによる感染です。

ノロウイルスに感染しているかどうかは便を検査してノロウイルスがどのくらい含まれているかを調べる方法がありますが、この検査は、3歳未満、65歳以上の方等を対象に健康保険が適用されるため、成人では保険適用外となります。ほかにも電子顕微鏡法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法などの遺伝子を検出する方法もありますが、こちらは研究目的となりほとんどの医療機関では行われていません。そのため、クリニックによっては流行状況や症状などから診断をされることもあります。

ノロウイルスの症状は?

潜伏期間1~2日間を経て症状が出現します。ノロウイルスに感染すると吐き気、嘔吐、下痢、腹痛が出現します。熱が出ることもありますが、高い熱が出るということはなく、軽度の発熱で経過します。また、頭痛、悪寒、筋痛、咽頭痛、倦怠感といった症状が出現する方もいらっしゃいます。

これらの症状が1~2日続いた後に快方へ向かい、後遺症が出ることもありません。健康な方の場合は、このように経過していくのですが、高齢者や乳幼児、基礎疾患のある方の場合は脱水など重篤な状態になってしまうこともあります。また、ノロウイルスに感染しても、上記のような症状が出ずに、軽度な風症状のみで済むという方もいらっしゃいます。

ノロウイルスの治療法は?

ノロウイルスは抗ウイルス薬などがないことや、経過が短いということから、対処療法が治療の基本となります。

対処療法とは自分が辛いとしている症状に対して行われる治療のことで、例えば、下痢が辛いという場合には整腸剤が処方されたり、嘔吐が辛いという場合には制吐剤が処方されたりします。下痢や嘔吐によって脱水となっている場合や口から水分が取れないという場合には、点滴を使用して治療をします。

身近にノロウイルスに感染した人がいたらどうすればいい?

ノロウイルスは人から人への感染力が非常に強いウイルスです。そのため、身近にノロウイルスに感染した人がいるならば感染予防を徹底していくことが必要です。

ノロウイルスの感染を予防する方法は、手洗いの徹底と消毒です。特に手洗いは、手を洗っていない時に手に付着しているウイルス量を100%とすると、流水のみで手洗いをした場合のウイルス残存率は1%、ハンドソープで10秒または30秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎをした場合のウイルス残存率は約0.01%にまで下がると厚生労働省でも報告があがっており、手洗いをすることはノロウイルスの感染予防に効果的であるということが分かっています。外出前後や、排泄後、食事前や調理前などにハンドソープを用いてしっかりと手洗いを行いましょう。

また、家庭にノロウイルスに感染した人がいる場合、消毒をしていくことも重要です。消毒には次亜塩素酸ナトリウムが有効です。アルコールでも効果がないというわけではありませんが、抵抗性が弱いので、次亜塩素酸ナトリウムを使用されることをおすすめします。

感染者の便や吐物が付いたものは0.1%に希釈した次亜塩素酸ナトリウムを使用し、ドアノブや手すりなど感染者が使用した場所を消毒する際には0.02%に希釈した次亜塩素酸ナトリウムを使用します。また、消毒で色落ちするものや次亜塩素酸ナトリウムの効力が弱まる木材を消毒する場合には、熱湯消毒(85度以上の熱湯に1分間)を行うか、アルコールを2度付記して消毒するという方法があります。

ノロウイルスは症状が軽快したとしても軽快後約1週間、長くても約1ヶ月間は、便からウイルスが排出されています。そのため、特に家庭内のノロウイルスに感染した人がいる場合には症状が軽快した後も感染対策を継続することが望ましいです。

ノロウイルスに感染したら学校や仕事には行けない?

ノロウイルスは感染症法において、5類感染症に指定されています。そのため、ノロウイルスに感染していた場合、診察をした医師は国に届け出なければなりませんが、感染者は特に手続きを取る必要はありません。そのため、インフルエンザのように学校や仕事から何日休まなければならないというような指示は出ません。ですが、症状が辛い時期には学校や仕事を休んで療養されることをおすすめします。

症状がなくなれば登校や出勤も可能ですが、自身の便からウイルスが排泄されていることを念頭において感染対策を取られるとよいでしょう。もしも、自身の会社や学校などで集団感染が発生した場合や、集団感染が起こる可能性が懸念される職業の場合には、学校や会社の判断で出勤や登校が制限されることもあります。

公開日:9月8日

監修:クリニックフォアグループ医師

参考文献

北海道薬剤師会

http://www.doyaku.or.jp/guidance/data/H26-1.pdf

厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000105095.pdf

厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html

鹿児島市 http://www.city.kagoshima.lg.jp/kenkofukushi/hokenjo/seiei-shoku/kenko/ese/ese/shokuchudoku/kate.html#ank6

国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/452-norovirus-intro.html

東京都福祉保健局 https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/noro.html

公益財団法人日本学校保健会 https://www.gakkohoken.jp/book/ebook/ebook_H290100/data/199/src/H290100.pdf