免疫とは?ウイルス・最近等に対して体の抵抗力を高めて身体を守る方法について、医師が解説します。

冬になると特にインフルエンザなどの感染症が蔓延しやすくなります。それに加えて今年は新型コロナウィルスといった新しい感染症も流行しています。

今回は、免疫の仕組みや免疫を高めるポイントについて解説します。

そもそも免疫ってどんな仕組みなの?

まずは免疫の仕組みについて知ることが大切です。免疫とは細菌やウイルスから体を守ってくれる防御システムと言われています。免疫には自然免疫と獲得免疫の2種類があります。

自然免疫とは、身体の中に細菌やウイルスといった病原体が侵入してきた時、その侵入してきた病原体に対して対抗できるように自分を守るものを作って攻撃をします。この病原体のことを抗原と言い、それに対して対抗するものを抗体といいます。このサイクルによって自然に免疫を獲得できることを自然免疫と言います。

一方、獲得免疫とは同じ種類の抗原がもう一度体内に侵入してきた場合に、すでに記憶されている免疫が活性化されて侵入してきた抗原を速やかに攻撃して追い払うシステムのことを言います。例えば麻疹や風疹など一度かかると二度とかからないといわれる感染症はこの獲得免疫の働きによって感染しないのです。

獲得免疫には4つの特徴があります。1つ目は特異性と言い病原体を見分けて自分が攻撃できる相手に攻撃することです。2つ目は多様性と言いどんな細菌やウイルスも対応することです。3つ目は自己寛容と言い自分の身体は攻撃しないことです。4つ目は免疫記憶と言って同じウイルスや細胞による感染症には二度とかからないということです。
この4つの特徴を生かし、自然免疫と相互に活用しながら人の免疫システムは維持されています。

免疫細胞は主に骨髄と胸腺と呼ばれる部分で作られ、リンパ流にのって体内を循環しています。

免疫が下がる原因にはなにがある?

私たちの体内で感染症にかからないよう重要な働きをしてくれている免疫。例えば普段かからないような感染症にかかったり風邪をひきやすくなったりする場合には一般的に免疫の低下が関係しています。この免疫はなぜ低下するのでしょうか。

免疫が低下する原因は多岐にわたります。免疫が低下する最もハイリスクな方が高齢者、乳幼児、妊婦です。特に高齢者は加齢に伴い、免疫細胞が低下したり新しく作られた免疫細胞の機能が低下したりするため、免疫が落ちます。年を重ねると風邪をひきやすくなるのもこの加齢による免疫機能の低下が原因とされています。

また強いストレスは自律神経のバランスを崩し、免疫の低下につながるといわれています。睡眠時間も同様に免疫低下につながる原因とされており、とある調査によると7時間未満の睡眠時間の人は、8時間以上の人に比べて約3倍風邪にかかりやすかったという結果が出ており、睡眠は免疫低下に関係しているということが分かっています。他にも健康な方の免疫が低下する理由として食生活の偏りや生活時間の乱れ、疲労、運動不足、喫煙、ストレス、過度の飲酒が挙げられています。

また、がんによる化学療法を受けている方、糖尿病やHIVなど免疫を低下させる病気にかかっている方も免疫が低下してしまいます。

免疫を高めるために大切な日々の習慣は?

それでは、ウイルスや細菌の感染から身を守るために日常生活の中でできることはあるのでしょうか。

まず、日常生活の中で最も見直しやすいのが食生活です。バランスのとれた食事を心がけることが重要です。免疫に影響する成分としては、各種ビタミンや、全粒穀物、緑茶、めかぶは免疫を上げる食品と言われています。いずれにしても、脂質・糖質・タンパク質・ビタミン・アミノ酸等、バランスの取れた食事を適切な量をとることが重要です。

また、腸管免疫という言葉もありますが、小腸には免疫細胞が多く存在しています。小腸と大腸を合わせると体内の約50%の免疫細胞が存在しているともいわれています。ですので、腸内環境を整えることが免疫を高めることにつながります。そのため、整腸作用のあるもの、例えば、乳酸菌も免疫に影響を与える食品として注目されています。インフルエンザ予防へと謳う乳酸菌飲料もありますが、こういった理由と推測されます。また、食物繊維を多く含む食材を摂り、腸内環境を正常化させるのも免疫を高める食生活として注目されています。

次に日常生活に取り入れたいのが適度な運動習慣です。汗を軽くかく程度の適度な運動は運動する日数が多いほど風邪をひく日数も少なく、風邪をひいた場合も軽症で済むという研究結果が出ています。ですが、運動強度の強いハードな運動をし過ぎると逆に疲労のため免疫が低下するともいわれているため、無理のない範囲内での運動を日常生活の中に適宜取り入れていきたいものです。

さらに体を温めることも有効だと言われています。
特に、腸がある腹部を温めることで免疫細胞の数が増えるという結果も出ています。湯たんぽなど汗をかかない程度のじんわりと身体を温めるグッズを日常生活に積極的に取り入れていきたいものです。